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リンパ浮腫とのつきあい方~日常生活編~

リンパ浮腫は一度発症してしまうと残念ながら完治は難しい病気・後遺症です。しかし、上手につきあえば、症状を軽減し、良い状態を維持することが可能です。 日常生活において症状を悪化させるの危険因子とその対策・予防について説明し、良い状態を長く維持するためのポイントをまとめてみました。

目次

リンパ浮腫ってなに?

「夕方になると足が腫れて靴がきつくなる」「前の晩に飲みすぎて、翌朝に顔がパンパンになる」
・・・そんな経験はありませんか?
いわゆる〈むくみ〉ですが、これは簡単に言うと、体の細胞の外に水が増えた状態をいいます。
これに対し、リンパ浮腫とは、リンパの輸送障害とタンパク質の処理能力の不全が加わって水とタンパク質が溜まったことにより起こる腫脹(腫れ)です。

むくみは健康な人にも日常的に起こりますが、リンパ浮腫は慢性の病的状態といわれています。

リンパ浮腫は原発性(一次性)続発性(二次性)の2つに大別されます。

原発性(一次性)リンパ浮腫
・先天性・・・リンパ管形成不全、異形成、弁機能不全など、明らかな遺伝子異常によるもの
・特発性・・・妊娠・出産や肥満が契機となることがあるが、はっきりとした原因が特定できない

続発性(二次性)リンパ浮腫
発症する原因が特定できるもので、リンパ浮腫全体の9割を占める
・がん手術に伴うリンパ節郭清
・放射線照射
・感染症(蜂窩織炎・リンパ管炎・白癬など)
・寄生虫(フィラリアなど)
・外傷、熱傷、虫刺され
・リンパ節転移や腫瘍の腫大によるリンパ系の物理的閉塞

リンパ浮腫は一度発症してしまうと残念ながら完治は難しい病気・後遺症です。
しかし、上手につきあえば、糖尿病や高血圧などと同じように症状を軽減し、良い状態を維持することが可能です。
「治らない」と悲観せず、セルフケアの習慣を身につけながら、リンパ浮腫との妥協点を見つけてつきあっていきましょう。


日常生活の中での危険因子と対策

リンパ浮腫にとっての3大禁忌は〈圧迫〉〈炎症〉〈ストレス〉です。
この3つの危険因子は私たちの普段の生活の中に溢れています。
すべてを避けて通ることは不可能ですが、心がけ次第でその影響を少なくすることは可能です。

症状を悪化させる高リスク因子を挙げ、注意点と対策を説明していきます。

挙上【患肢はなるべく心臓より高い位置へ】

日中活動時は職場などで挙上できる環境を作りましょう。

例えば、下肢の浮腫の場合は机の下に足をのせられるよう工夫したり、上肢の浮腫の場合は
小クッションなどに肘をのせるなどして、少しでも挙上した状態を保ちます。
私は自分のデスクの下に足置き用の段ボールを置き、クッションを上にのせて挙上していました。

また、休憩時間に少しの時間でも横になることができれば、症状もだいぶ楽になります。

職場の理解・協力を得ることで症状も気持ちも楽になりますので、しっかり説明することが大切です。



就寝時は一日の中でも一番長く患肢をゆっくり挙上できる時間です。

座布団や低めの柔らかいクッションなどで患肢を少し高めにします。
長枕や抱き枕を利用して、患肢を上にして眠る習慣をつけると安心です。
この時、高く挙上しすぎず、心臓よりやや高めを目安にしてください。
高く挙上しすぎると多量のリンパ液が還流し処理しきれなくなって腫れがさらに悪化することがあるため
要注意です!!


圧迫と負荷

患肢への局所的な圧迫や長時間・過剰な負荷は症状を誘発し、助長する原因となります。

例)・患肢での血圧測定や採血 → 医療機関であらかじめリンパ浮腫であることを言っておく

  ・患肢側にバッグをかけたり持ったりする → リュックやキャリーカートの活用

  ・正座や長時間の立ち仕事、長時間のしゃがんだ姿勢(和式トイレ等)
 
  ・ゴルフ、テニス、卓球(特に上肢)、サッカー(下肢)などの遠心力を伴うスポーツ
                     → 弾性着衣を着用しなるべく短時間で


また、患肢だけでなく全体的にゆったりとした締め付けない服装を選ぶことも大切です。
食い込んで跡がつくような下着や、女性の場合ガードルやウエストニッパーなどの補正下着、ぴったりとしたブーツなどは避けましょう。


傷・炎症

患側は炎症を起こしやすく、また炎症を起こすと治りにくいため、普段から注意し、保護するようにしましょう。

例)・ペットとのじゃれあい
  ・ガーデニングや畑仕事、農作業 
  ・日焼け
  ・虫刺され
       ⇓
  屋外では手袋・長袖長ズボンを着用するなどして素肌の露出をできるだけ避ける
  虫よけ対策・日焼け止め対策
  ・台所仕事(魚の処理時に骨が刺さる、生ものを扱う等) → ゴム手袋等の着用

手や足のささくれや水虫も炎症の原因になりやすいため、普段からケアや治療をしておきましょう!!

※リンパ浮腫の患側に炎症が起こるとリンパ管炎蜂窩織炎を発症し、熱感、腫脹、痛みや発熱などの症状が現れ、抗生剤による治療が 必要となります。

 
蜂窩織炎について】

蜂窩織炎は皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて細菌が入り込み、感染する皮膚感染症です。
初期では皮膚に赤い小さな点々がみられ、徐々に赤く腫れて虫に刺されたように細かいブツブツが現れます。
症状が進むと患部が熱を帯び、触ると痛みを感じるようになります。
初期段階で早期に発見することができれば抗生剤の内服で治まりますが、進行すると入院処置が必要となることがあるため、普段からしっかり皮膚の様子を観察し、異常があれば早めに受診するようにしましょう。

蜂窩織炎の症状があるときは、リンパドレナージや圧迫療法は一旦中止して、再開は主治医の指示に従いましょう。

肥満

リンパ浮腫自体は飲食の制限はありませんが、肥満はリンパ浮腫の発症・増悪の危険因子となります。

標準体重を目安に食生活・適度な運動を心がけましょう。
体重の推移を継続的に記録することも肥満予防に効果的です。

温度差

温度差が大きいと血液の巡りはよくなりますが、リンパ循環量も増えるため、リンパ浮腫にとっては処理が追い付かず、好ましいとは言えません。
温泉・サウナ・岩盤浴などは時間を短くしたり、ぬるめの半身浴にするなど、工夫しながら楽しみましょう。

皮膚への刺激

鍼灸・マッサージ・指圧、ツボ押しなどはリンパ浮腫には高リスクになります。
マッサージや指圧、ツボ押しなどは局所に強い圧迫がかかり、鍼灸は皮膚に傷を作るため患側には禁忌です。
また、シップ等の貼付剤はかぶれたり、掻くことにより傷ができやすいので注意が必要です。

リンパ浮腫改善にリンパドレナージは有効ですが、エステシャンが行うリンパドレナージとリンパ療法士が施術するリンパドレナージは全く異なります。
リンパ浮腫と診断された、またはその可能性がある場合は医学的根拠に基づいた施術を受けることが重要です。

過労

心身の過労・ストレスはリンパ浮腫を誘発します。
仕事と家事・育児の両立や介護、普段のライフスタイルとは別の行動(旅行・引っ越し等)などで
無理をすると症状が悪化する原因となります。
規則正しい生活と十分な休息が大原則です!!!

経験上、「今日はちょっと疲れたなあ」と感じたり、ストレスが溜まってイライラしているときなどは
いつも以上に腫れていると感じることがよくあります。
ストレスなくゆったりと過ごすというのは今のご時世ではかなり難しいことです。
でも、だからこそ意識的に自分を緩めてあげることも大切だと思います。

スキンケアについて

リンパ浮腫を起こしている患部の皮膚は免疫力が低下し、健肢(腫れていない側)に比べて脆弱な状態となり、感染を起こしやすくなっています。
患肢に炎症が起こると浮腫が悪化し、さらに炎症を繰り返すと慢性化するため、炎症を予防することがリンパ浮腫の症状軽減にも重要です。

日常的なスキンケアで患肢の皮膚を健全に保ち、炎症や感染を予防し、また観察することによって炎症の早期発見につなげましょう!!


スキンケアの基本は皮膚の清潔と保湿です

季節ごとの対策

【 夏対策 】

夏は気温が上昇し、汗をかきやすくなります。
皮膚に汗の成分が長く残った状態はかぶれなどの原因になりやすいため、こまめにふき取りましょう。
また、日差しが強くなり日焼けをしやすい季節ですが、日焼けは立派な火傷です。
紫外線を直接受けない衣類(長袖・長ズボン)などを着用し、予防しましょう。

また、日焼け止めクリームなどでかぶれる場合もありますので、自分に合った方法で肌を保護することが大切です。

【冬対策】

空気が乾いて肌も乾燥しやすくなりますので、しっかり保湿をしましょう。
また、こたつやホットカーペット、携帯用カイロなどを使用することも多くなると思いますが、
直接接触しないようにしたり、長時間の使用は避けるなど、低温火傷には十分な注意が必要です。

屋外での作業

ガーデニングや畑仕事、農作業などの屋外での作業には日焼け、虫刺され、傷など複数の危険因子を伴います。

肌を保護するために、長袖・長ズボン、ガーデニング用の手袋などを使用して肌の露出を最小限にし、トラブルを予防していきましょう。

除毛・脱毛

薄着になる季節になると気になると思いますが、リンパ浮腫発症部位のムダ毛処理は行わないのが基本です。
特に、毛抜きは毛根から細菌が侵入して炎症を起こしやすくなるため禁忌です。
また、除毛クリームや脱色剤は肌への刺激が強く、皮膚炎を起こしやすいためできる限り避けた方がよいでしょう。

爪・指先のお手入れ

【爪の手入れ】
 深爪に注意し、伸びた時に巻き爪にならないように(特に足の爪)、あまり端を短く切らずにスクエア型(四角形)に整える。

下肢の浮腫では特に巻き爪が多くみられ、爪が皮膚に食い込んで可能することがあるので注意が必要です。
※抗がん剤治療中は、薬の影響で巻き爪になりやすいため、特に気をつけましょう。

【さかむけ・甘爪】
爪周囲の皮膚が乾燥して部分的に皮膚がはがれた状態になることがありますが、無理にはがしたりせず、爪切りなどで根元から切るようにし、ハンドクリームなどで保湿しましょう。

家事対策

水仕事や洗剤などの使用頻度が高いため、手が荒れやすい状態になります。
キッチン用のゴム手袋を使用し、こまめにハンドクリームを塗るなど工夫しましょう。

また料理の際の包丁や生もの(魚の骨など)による傷や、コンロやアイロンによる火傷の危険もあるため十分注意が必要です。

※弾性着衣は脱いだり折り曲げたりすると浮腫を悪化させる可能性があるため、水仕事の間も装着したまま濡れないように作業するようにしましょう。

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